抄読会2015年度 season1

2015年6月26日 担当 大野
Anesthesiology. 2015 Jun;122(6):1235-52.
PEffect of Therapeutic Hypercapnia on Inflammatory Responses to One-lung Ventilation in Lobectomy Patients.
Gao W, Liu DD, Li D, Cui GX.

片肺換気でAir群(Air+O2、PaCO2:35-45mmHg)、CO2群(CO2+Air+O2、PaCO2:60-70mmHg)に分けた。
BALF腫瘍壊死因子、血清およびBALFのIL-1、IL-6、IL-8はCO2群の方が低かった。
ピーク圧、プラトー圧ともにCO2群の方が低かった。コンプライアンスはCO2群で高かった。さらに、CO2群で術後の酸素指数がより高かった。10人の患者で片肺換気中に少し血圧と心拍数が上昇した。


2015年6月25日 担当 中野
Anesthesiology. 2015 Jun;122(6):1312-26.
Xenon Treatment Protects against Remote Lung Injury after Kidney Transplantation in Rats.
Zhao H, Huang H, Ologunde R, Lloyd DG, Watts H, Vizcaychipi MP, Lian Q, George AJ, Ma D.

高キセノン療法は腎グラフトのIRIによる遠隔期の肺障害の保護効果があり、それはmTOR-HIF-1α 経路の活性化と、HMGB-1の核から細胞質への放出を抑制することによると考えられる。



2015年6月24日 担当 大石
Anesthesiology. 2015 May;122(6):1224-1234
Preexisting Cognitive Impairment Is Associated with Postoperative Cognitive Dysfunction after Hip Joint Replacement Surgery
Brendan Silbert, Lisbeth Evered, M.Biostat., et al

高齢の患者における、非心臓手術前後での認知機能障害の関係について調べた。術前に認知機能障害がある患者では、7日後と3ヵ月後の術後認知機能障害の発生率が明らかに高くなった。また、12ヵ月後の認知機能低下が明らかに多くなった。



2015年6月23日 担当 野地
Anesthesiology. 2015 Jun;122(6):1214-23
Intraoperative tight glucose control using hyperinsulinemic normoglycemia increases delirium after cardiac surgery.
Saager L1, Duncan AE, Yared JP, Hesler BD, You J, Deogaonkar A, Sessler DI, Kurz A.

高心臓手術後の患者において術後せん妄はよくみられる。厳密な血糖コントロールは死亡率と合併症の罹患率を減らすことが示されている。今回、筆者らは心臓手術後の患者において、術中に持続インスリン静注で血糖コントロールを行い厳密な血糖コントロールをすると術後せん妄に影響するかを調べた。
術中に多くのインスリンを使用して血糖正常化すると心臓手術後のせん妄のリスクが増えたが、重症度に変化はなかった。



2015年6月19日 担当 江花
Crit Care Med. 2015 Jun;43(6):1255-64. 

Lipid paradox in acute myocardial infarction-the association with 30-day in-hospital mortality.
Cheng KH, Chu CS, Lin TH, Lee KT, Sheu SH, Lai WT.

全LDLコレステロール値およびトリグリセリド値の上昇は、冠動脈疾患の主要な危険因子である。しかしトリグリセリドから生成される脂肪酸は主要なエネルギー源であり、LDLコレステロールは、細胞膜の合成に重要である。脂質状態と急性心筋梗塞患者におけるKillip分類によって評価される重症度、また30日死亡率との関係を明確にすることを目的とした。
LDLコレステロール、低トリグリセリド、高Killip重症度は、急性心筋梗塞患者での高い30日院内死亡率と関連していた。急性心筋梗塞を有する患者の初期の脂質プロファイルは、予後予測において価値を持つ。



2015年6月12日 担当 吉田
Br. J. Anaesth. 2015. 114 (4):663-668. 

Type of anaesthesia and patient quality of recovery: a randomized trial comparing propofol–remifentanil total i.v. anaesthesia with desflurane anaesthesia .
W.-K. Lee, M.-S. Kim, S.-W. Kang,  S. Kim and, J.-R. Lee.

全身麻酔には、全静脈麻酔(TIVA)と吸入麻酔の二つの方法があるが、患者の回復の質の違いははっきりとしていない。全身麻酔による手術後の回復を評価する尺度としてQoR-40(quality of recovery)質問票があり、今回、我々はTIVAもしくはデスフルランによる全身麻酔で手術を受けた患者において、QoR-40を比較した。
甲状腺手術を受けた女性において、デスフルランよりTIVAによる麻酔の方が回復の質が有意に良いことが証明された。



2015年6月11日 担当 最上
Br. J. Anaesth. 2015. 114 (4):615-622. 
Predictors and outcome impact of perioperative serum sodium changes in a
high-risk population.

J. Klinck,  L. McNeill,  E. Di Angelantonio  and  D. K. Menon.

周術期のナトリウム濃度の急激な変化の予測因子と効果について、
27,068の非心臓手術を対象に後ろ向きコホート研究を行った。術前から術後7日目までの血清ナトリウムの値を測定した。ナトリウム濃度の5mmol/L以上の変化は死亡率の増加と関連していた(調整オッズ比
Na値減少で1.49、増加で3.02)。ナトリウムの減少に関連する因子は、60才以上、糖尿病、およびPCAの使用であり、ナトリウム増加に関連する因子は術前の酸素への依存、調節呼吸、中枢神経系の抑制、非待機手術、および手術での大量出血であった。

(--〆)術前検査で、ナトリウムの血中濃度はしばしば軽視されてしまいますが、とても重要なのですね。



2015年6月10日 担当 井石
Anesthesia & Analgesia:April 2015 - Vol.120(4), 771–780
A Phase IIa, Randomized, Double-Blind Study of Remimazolam (CNS 7056) Versus Midazolam for Sedation in Upper Gastrointestinal Endoscopy.
Borkett, Keith M. BSc.

処置のための鎮静目的で単回投与するレミマゾラムの効能、および安全性に関して調べた。上部消化管内視鏡検査におけるレミマゾラム(0.1-0.2mg/kg)単回投与は迅速な鎮静効果および鎮静からの回復が期待できる。安全性に関してもミダゾラムと遜色がなく、短時間作用の鎮静薬として有望である。



2015年6月5日 担当 野地
Anesthesiology 4 2015, Vol.122, 736-745. 

Randomized Double-blinded Comparison of Norepinephrine and Phenylephrine for Maintenance of Blood Pressure during Spinal Anesthesia for Cesarean Delivery.
Garwick D. Ngan Kee, M.B.Ch.B., M.D., F.A.N.Z.C.A., F.H.K.A.M.; Shara W. Y. Lee, B.Sc.(Hons.), M.Sc., Ph.D.; Floria F. Ng, R.N., B.A.Sc.; Perpetua E. Tan, B.Sc., M.Phil.; Kim S. Khaw, M.B.B.S., M.D., F.R.C.A., F.H.K.A.M. 

子帝王切開分娩に際しての脊髄くも膜下麻酔にコンピュータ制御で投与した場合、ノルエピネフリンはフェニレフリンと比較して血圧を維持するのに有効であり、心拍数と心拍出量が多いこととも関連していた。さらなる研究で産科患者への昇圧剤としてノルエピネフリンの安全性と有効性を確認することが重要であると考えられる。




2015年6月4日 担当 大野
Anesthesiology. 2015 May;122(5):985-93 . 

Prediction of Movement to Surgical stimulation by the Pupillary Dilation Rreflex Amplitude Evoked by a Standardized Noxious Test.
Guglielminotti J, Grillot N et.al.

子宮内容除去術のときに手術の刺激で患者さんが動くかどうかを予測するのに、侵害刺激で誘発される瞳孔散大反射の振幅はレミフェンタニルのCeと同じくらい正確だった。
オピオイドの推定Ceが利用できないときや信用できないときには有用かもしれない。



(@_@)瞳孔散大反射を、もっと簡単に測定できたらいいですね。



2015年6月3日 担当 中野
Anesthesiology. 2015 May;122(5):974-84. 

Safeguards to prevent neurologic complications after epidural steroid injections: consensus opinions from a multidisciplinary working group and national organizations.

Rathmell JP1, Benzon HT, Dreyfuss P, Huntoon M, Wallace M, Baker R, Riew KD, Rosenquist RW, Aprill C, Rost NS, Buvanendran A, Kreiner DS, Bogduk N,Fourney DR, Fraifeld E, Horn S.

硬膜外腔へのステロイド投与について、FDA、専門家によるワーキンググループ、13の専門機関が共同で以下の17の知見をまとめた。

1頚部 経椎弓間法は重篤な神経障害のリスクは低い。
2経椎間孔法は粒子状ステロイドを用いた場合、リスクが低い。
3頚部 経椎弓間法はイメージガイド下に行うべきである。
(適切なAP、lateral、斜位で、テストに造影剤を使用)
4頚部 経椎間孔法は、リアルタイムの透視下またはDSA下(AP)に造影剤を注入してから、患者に害を及ぼす可能性のある薬物を投与すべきである。
5頚部 経椎弓間法はC7-T1での施行を推奨する。なるべくC6-7より上位では行わない方がよい。
6頚部 経椎弓間法は事前の画像検査で針を刺入するのに十分な硬膜外腔が存在することが確認できている場合のみ行うこと。
7粒子状ステロイドを治療目的の頚部 経椎間孔法で使用してはならない。
8腰部 経椎弓間法はイメージガイド下に行うべきである。
(適切なAP、lateral、斜位で、テストに造影剤を使用)
9腰部 経椎間孔法は、リアルタイムの透視下またはDSA下(AP)に造影剤を注入してから、患者に害を及ぼす可能性のある薬物を投与すべきである。
10腰部 経椎間孔法での一番最初の注入には非粒子状ステロイド(ex デキサメサゾン)を用いるべきである。
11腰部 経椎間孔法で粒子状ステロイドが使用されうる状況もある。
12すべての経椎間孔法で針先の動揺を抑えるためエクステンションチューブの使用を推奨する。
13フェイスマスクと滅菌手袋を着用しなければならない。
14経椎弓間法か経椎間孔法かの選択は、リスクとベネフィットを天秤にかけて治療者が最終判断すべきである。
15頚部、腰部 経椎弓間法では、患者に造影剤アレルギーの既往がある場合など、造影剤の適応外である時は使用しないで行うことができる。
16経椎間孔法は造影剤が適応外の時は使用しないで行うことができるが、その場合粒子状ステロイドは使用できない。保存料無添加、非粒子のステロイドを使用すべきである。
17中~深鎮静は推奨されない。軽い鎮静であれば、患者は痛みやその他有害な感覚を伝えることができる。





2015年6月2日 担当 大石
Anesthesiology. 2015 May;122(5)1075-83

Anesthesia with Disuse Leads to Autophagy Up-regulation in the Skeletal Muscle.
Aki Kashiwagi et al.  

長い鎮静や全身麻酔の後に骨格筋が萎縮することが知られている。骨格筋の自己貪食の程度が麻酔そのものに影響を受けるかどうか調べた。
ペントバルビタール、ケタミン、ケタミン+キシラジン、イソフルラン、プロポフォールによる麻酔で、時間依存的に自己貪食が促進された。麻酔がない状態での短期の筋肉の不使用は自己貪食にはつながらなかった。



2015年5月22日 担当 江花
Intensive Care Med. 2015 May;41(5):865-74.
EDirect extubation onto high-flow nasal cannulae post-cardiac surgery versus standard treatment in patients with a BMI ≥30: a randomised controlled trial.
Corley A, Bull T, Spooner AJ, Barnett AG, Fraser JF.

肥満患者は心臓手術後に深刻な無気肺をきたすことが多く、その回復も遅い。この研究はBMI≥30の心臓手術後患者の抜管において高流量鼻カニューレ(HFNC)が標準治療と比較して、術後無機肺を低減させ、また呼吸状態を改善させるかどうかを調査することを目的とした。
BMI≥30の心臓手術後患者におけるHFNC下での予防的抜管は、呼吸機能の改善にはつながらなかった。呼吸機能の悪化と挿管の防止におけるHFNCの役割を評価するためのより大きな研究が必要とされている。


2015年5月21日 担当 江花
Intensive Care Med. 2015 May;41(5):887-94.
Early physical rehabilitation in intensive care patients with sepsis syndromes: a pilot randomised controlled trial.
Kayambu G, Boots R, Paratz J.

早期の身体的リハビリテーションが身体的な機能を向上させるかどうか、またそれが敗血症症候群患者にどのような結果をもたらすかを調査した。
早めの身体的なリハビリテーションの実行は、自己申告の身体的な機能を向上させることができて、全身性の抗炎症性作用を発揮することができる。